2025/10/30 23:09
国手帖。
それはモノを売るための記録ではなく、
風土と生活が交わる一瞬を写し取った、旅の手帖のようなもの。
土地と人の関係を手の痕跡として記す、
現代の民藝アーカイブです。

今回の展示では、タイ北部の山岳地帯で受け継がれてきた民藝が並びます。
腰機で織られた布、山岳民族が受け継いできた藍染、
地の銀を打ち出したカレンシルバー。
素朴な釉の皿や、草で編まれたかご。


山の湧き水と灰汁、そして藍の葉だけで染められます。
その青は、太陽と風のあたたかさの中でしか出せない色。


カレンシルバーは、暮らしの中のお守りのようなもの。
身につける人を飾るためではなく、
生きる日々を共にするために作られてきました。
小さな刻印や凹みには、祈りや願いが込められています。


そして土器やかご。
それらは、誰かの暮らしの中で使われてきたもの。
美しく作るというより、日々を支えるために形づくられた、
生活の道具たちです。


どの品も、ただの民藝品ではなく、
気候や土、祈りや生活といった、
土地の記憶そのもののかたち。
生きることの隣で生まれたものたちです。
自然から素材を借りて、手を動かし、自然に返していく。
その循環のなかで無理なく生まれた形たち。
彼はそうしたものを、旅の中で静かに拾い上げ、
一冊の手帖のように記録しているのだと思います。
この展示を行う彼は、もともとpuzzleのお客さんでした。
穏やかで、言葉を選ぶように話す人。
その奥に、まっすぐな好奇心と繊細さがあるのがわかる人でした。
思えばその頃から、彼の中には見る力があったのかもしれません。
県外に出ても、こうしてまたpuzzleで展示をしてくれること。
それがただ嬉しくて、少し誇らしい。
ここで過ごした時間が、彼の中でちゃんと残っていたんだなって思うと、この場所を続けてきてよかったなって思います。
遠くの国の風景が、彼の視点と手を介して、高知にそっと届きます。
たぶん、彼の人柄がそのまま並んでます。
久々に会う人も、初めて会う人も、
彼の魅力に会いにきてください。
-国手帖-
民藝は、古くて新しい
各地に息づく「用の美」を、現代の視点で見つめ直す
手帖を開くように、道具と風土の美しい結び目を探求する
国の民藝手帖
