2025/06/28 18:06

本コレクションは、現代社会におけるキャンセルカルチャーと私刑の文化、そしてそれによって生まれる表現の抑圧をテーマとしています。詳しくはステートメントを是非ご一読ください。
今季、着想源となったのは、映画「トゥルーマン・ショー」。
彼の人生は、生まれた瞬間から番組だった。
カメラが追い、観客が笑い、すべてが管理された"日常"。
でも、彼は知らなかった。
その"リアル"が、ただの演出だったことを。
どこか私たちにも似ている。
タイムラインに漂う理想像、いいねの数で価値を測る日々。演じることが当たり前になった世界。
「自由とは何か?」「真実とはどこにあるのか?」
今季のTSTSは、そんな時代に対する根源的な問いを投げかけてくる。

今回のTSTSは、ブランドらしい遊びやユーモアを内包しながら、これまでにない黒を基調とした構成が印象的だ。
でも、それは絶望の黒ではない。
暗闇の奥で、ほんのわずかに彩る色彩。
それは「まだ残された自由」。
「まだ失われていない希望」。
完璧に整えられたカラフルな世界よりも、何も見えない闇の中にこそ、私たちは"選択"を託されている。
自由か、安心か。
未知か、予定調和か。
映画のラストシーン。
希望であるはずの扉の向こうに広がる、真っ暗な世界。
それでも彼が一歩を踏み出したように、TSTSもまた、暗闇の中にこそ自由があると語りかけてくる。
すべてが監視され、言葉が武器にもなる時代。
自由に表現することが難しくなっている今、声なき声のための服が必要だ。

コレクションで多様されているDカンやナスカン、ミリタリー風なディテールについては、現代の閉塞感に対して「希望」を見出そうとする中での、カウンターカルチャー的な気運な表れとして位置付けられているように感じた。
60-70年代頃のヒッピーやパンクのように時代抗いながら生まれた表現たちが、今季のディテールに細かく息づいている。
GOODBYEとは、終わりの言葉ではない。
むしろ、次の一歩への扉。
その選択は、私たちの手の中にある。
だからこそ、今季のTSTSは、「問い」だけを差し出して、静かにこう告げる。
WORLD, WORLD, WORLD, GOODBYE
そして、会えないときのためにこんにちは、こんばんは、おやすみなさい。